隣り合わせ
亮は…麻衣に対しては妹みたいに感じていると、話した。
だけど、俺の心にいる人は。
麻衣じゃない…。
原田さんなんだよ。
「亮?俺、麻衣の気持ちに答えられないんだ。」
今、言わなきゃ、いけないような気持ちになった。
静かなバイトの控え室で、俺は口を開いた。
「あの妊婦さん?」
「…っあぁ〜。」
タバコを手にしながら、亮は、俺の気持ちを悟っていた。
「亭主いるだろうが?」
亮の言葉はキツく胸を打った。
勿論、俺だって分かっている。
「報われないって分かってる。」
俺は…自分の気持ちが分からなくなって、実家に帰った事。
そして…原田さんが口にした、
『多分、かんちゃん!』
という、意味が気になって…仕方がない事を亮に話していた。
兄貴と違って亮は黙ったまま。
しばらく、沈黙が流れた。
きっと、軽蔑しているのか?
亮は…天井に舞うタバコの煙をただ眺めていた。