アシタノヒカリ



誰か確認したいけど、抱き締められていて顔が上げられない。



「逃げられかけてもねぇよっ。
恥ずかしがっているだけなんだから」



イヤ、その解釈もおかしい。

私のどこを見たらそう思えるのだろう。

幸せな人だな。



「だいたい、あんた、一体何者だよっ。いつまで彼女を抱いているんだよっ。返せっ」



急に腕を引っ張られる。

無理矢理腕の中から取り出そうとしているらしい。

あんたに触られるのも嫌だし、返せの意味も分からない。

私はあんたのモノじゃない。


私が嫌がる以上に、彼が私を力一杯抱き締めて離さなかった。

それでも、腕を引っ張る男の手は、勢いよく叩き落とされた。



「汚い手で触るな。知那は、俺の彼女だ」



彼は、きっぱりと言い放つ。




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