きみが望めば
21.胸さわぎ
「っ何?!どうしてすぐに知らせなかった!」

アル王子は国賓客を見送り終えた後だった。
執事の爺から、莉乃の部屋で不思議な声が聞こえたらしいと報告を受けた。
「姫は?部屋にいるのか?」
「はい、先ほど朝食を終えられ今はお部屋だと、、」
爺が言い終わるのを待たず、アル王子は莉乃の部屋がある塔へ駆け上がっていく。
莉乃の身に何も起こっていないことを祈っていた。

「王子さまっ!」
「いったい何事ですか?!」
駆け上がってきた王子に見張りの騎士ふたりは顔を見合わせた。
「姫は?姫は中か?」
息を整えつつ、扉に向かうアル王子。
取っ手に手が掛けられた。
「はい、お食事の後お部屋に戻られたきり、」

「姫?、、」
扉をノックする。

返答はない。

アル王子は薄く扉を開けた。
ふわりとカーテンが風に舞うのが見えた。

遅かった。


「リノ姫?!」部屋に入った王子は呆然とした。
部屋に莉乃の姿はなかった。
ソファに掛けられた昨夜のドレス、莉乃の香りが残っていた。

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