きみが望めば
洋服店の前、店主と並んでいた兵士がこちらに走ってこようというのが見えた。

「莉乃っ!」
あたしより早く、ラファが身体を翻し走り出した。彼に身体ごと抱えられる。
「薔薇の模様!」
「だろうな!」
人波をすり抜け、ラファがぐんっと身体を縮めた。
「きゃっぁ!」

壁を蹴り上げ、屋根に飛び上がった。
走り続ける。

兵士が建物の下で追いかけてくるのが見える。
「来てる!」

屋根の端に来るとラファが止まった。
「莉乃、祈ってて。」

いきなり熱いくちびるで口を塞がれ、驚いて開いたままだった口の中に舌が絡み付いてきた。
「んっ!」
身体の奥がきゅんとして、身体中が熱くなる。
こんな時に。。??

「飛ぶ!」
ぴょーーーー、、、っと風が舞い上がった。


風の音と重なって、あたしの叫び声が響いていたのかどうかさえも分からなかった。

ただあたしは落ちていく感覚の中、 必死に祈っていた。

飛んで、飛んで、飛んで!!!!

どうか無事で逃げられますように!!!!
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