きみが望めば
「ブルー、会いたかったリノ姫だよ。」
愛馬に乗せるなり、アル王子もすぐ後ろに同乗した。ブルーが大きくいなないた。

ラファ、大丈夫かな、、
どうか、今は出てこないで、、


ぎゅっと祈った。


背後からそっと肩に触れる手のひらが冷たかった。
「ずっと心配で、探していたんだよ。」
悲しげな声、、
アル王子は素敵な人だと思う。
だけど今のあたしにはーーー。
振り向かなくても表情がわかる気がして、あたしは振り向けなかった。

頭にアル王子が口づけをしたのがわかった。


「黒い騎士が、、そばにいるはずだ。」
アル王子が手綱を引き、ブルーの身体を回転させた。
見つからないで、、!

後ろから抱きしめられ、身動きができない。

ラファ、来ないで。。


「黒い騎士が姫を連れてこの浜に向かったと報告を受けた。どれだけ君を探していたか。」
熱い吐息が首筋にかかる。
「リノ、、」

「やめて、、っ」
振り払おうと身じろぎして、アル王子の瞳とぶつかった。
「、、何をされた?、、黒い騎士にどこを触られた?」
かぁっと身体が熱くなる。
「姫の香りが、、変わったようだ。。」

「王子様、一度お城に戻られたほうが。」

ゆっくり、アル王子が首を振った。
「わかっている。」

少しでも王子から離れようと馬上で身体を捻った。ふいに、月の光がほんの少し影った気がして、頭上を仰いだ。

「そんな、、」
あたしはつぶやいていたらしい。
アル王子が聞き返してきていたから。
「え?」



来ないでって、、

祈ってたのに。。






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