きみが望めば
「おい。」

びくっとして足が止まった。
振り向きたくないのに、肩を掴んだ手に身体ごと振り向かせられる。
「どこへ行く。王子探しはいいのか?途中だろう?」

金色の瞳。彼もびしょ濡れだった。
無言でもがくあたしに声は続いた。
「すまなかった。」
手首だけを掴んで、今は抱きしめては来ない。

「香水の香りのせいで理性を失っていたらしい。怖がらせて悪かった。」

とどめきれない、、声が漏れた。
涙が溢れてとまらない。

雨はまだ止まない。


彼は泣くあたしに触れようとしなかった。
「無いよりマシだから。」
自分のマントをあたしに掛けた。

どうしてあたしはラファが嫌なんだろう?
もう思い出せないけど、いつもいい印象がなかった、そんな気がする。
マントをくれた彼はそんなに悪い人じゃないのかもしれないのに。。

手首を掴んで、肩まで迫ってきたくちびる。
抗えないくらい強い力。思い出してぞくっとした。
なんで嫌いかなんて、今は考える余裕はなかった。
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