きみが望めば
「こんな時は、早期回収と記憶消去だっけ?」
へこむ俺の肩をぱんぱん叩きながら、レドは顎をくいっと動かした。
その視線を追うと、莉乃が立ち上がり部屋のあちこちを見回しているところだった。

「ぅわぁ、、」
部屋にある小道具たちが面白いのだろう、
好奇心で莉乃の目がきらきらしている。
事務所にはファンタジー世界のいろんなものが備品としてあった。

「おもしろいでしょ?」
レドは鼻眼鏡を押し上げ、にやっと笑った。

色とりどり、様々な備品に埋もれそうな事務所を莉乃は目を輝かせて見ている。

「これは夢?私、夢を見てるの?」

きた。
その台詞、もしかして。

俺はレドと視線が合った。
ふたりして帳簿を覗き込んだ。

「絵本莉乃」

そこに記された名前が変わった。



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