きみが望めば
突然アル王子に初めてのキスを奪われ、気持ちは落ち込んでいるのに、あんまりのお城の美しさに感嘆の息が漏れた。
「すごい、、」
「気に入った?」
お城には王子のお出迎えだろう人達がたくさん待っていた。

白馬は城から出てきた人に手綱を引かれゆっくりとアーチを描いて止まった。
ひらりと身軽に馬上から降りた王子があたしを下へと受け止める。
ずっと揺られていたためか、身体がガクガクした。
「王子さま。お帰りなさいませ。ご無事でございましたか?」

「ああ、もちろん。姫を探し出したんだ。私はこの上なく幸せ者だよ。」
アル王子は身体が痛くてフラつくあたしに手を添えて受け止めた。上機嫌なようすだ。
「それはようございました。」
白髪の初老の男性が近くに来ていた。
あたしは違うと言いたいのに、アル王子が遮った。
「今夜はパーティだ。すぐに支度を進めてくれ!」
「かしこまりました。」

そのまま横抱きに抱え上げられる。
「僕は君を離さない。君をひと目見た時から決めていたんだ。」
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