きみが望めば
本気にしたその反応がまた面白い。
「おいで。」
彼女の手を引いた。

「大丈夫、俺が泣かせない。」
そのままとまどう莉乃の腰を抱き寄せ、隣の会場へと踏み入れた。
軽やかなワルツだ。
「踊ろう。」

どうやら莉乃の香りは俺とアル王子にしか分からないらしい。他の男は寄って来ていない。


アル王子はここからでもわかるくらい、ちらちらとこちらを見ている。
莉乃にはその視線がわからないのか?

招待客のお相手で、正式に妃候補として紹介できていない莉乃のところへは飛んで来られない、そんなところだろう。あの視線からして。
だがそんなことはもう俺の知ったことじゃない。

オーケストラの奏でるメロディに合わせ、ワルツの波に乗る。莉乃はくるくると上手に踊っている。
「ラファ、上手なのね。」
俺のリードに委ね、肩にそっと手を乗せた莉乃が言う。
「莉乃も上手だよ。楽しい?」
「ラファのおかげで。」
こくん、と頷く。
潤んでいた瞳がやっと笑った。

「どうして笑うの?」
「いや、良かったと、思って。」
ぐっと肩を抱いた。
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