きみが望めば
「ひとりで泣くな。俺がいる。」
莉乃は俯いたが、耳たぶが赤くなっている。
甘い香りが強くなる。心は読めないが、彼女の気持ちが一層見えるようだ。
ふっと笑みがこぼれる。

ワルツは続く。
莉乃を腕の中に抱きしめ、踊り続ける。


「ラファ。」
彼女にもやっとわかったらしい、アル王子がこちらを見ていることが。
俺の肩越しに、王子のほうを見ている。

「ガイドだから、わざと王子に見せるようにこうしてくれるの?」
俺の足が止まりそうになった。
「王子に近づけるために?」
莉乃の瞳を覗き込んだ。


「まぁ、アル王子様がフロアに降りられるわ!」
「ぜひ私とお相手を。」
「まぁ、私が先よ!」


俺は王子から離れたところへ莉乃を運んでいく。
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