sweet bitter valentine
「似合わない、なんてことねえよ!俺が言うんだから間違いない!相手も嬉しいって思うよ!俺が保証する!」
「………ありがとう?」
「渡してこいよ、まだバレンタイン終わってないし、相手もまだ学校いるかもしれないじゃん!」


……優しいなあ……


「ありがとう、でもいいの、もともと渡すつもりもなかったし……」
「嘘だろ!あんなに丁寧にラッピングしてあったじゃ………あ、」

失言。まずい、という顔をして、アイツは私の方を見た。

「……見てないんじゃなかったの?」
「……ごめん……」

私は、ははっ、と笑った。

「いいよいいよ、というか、最初から気づいてた、見られたって」
「なんか…ごめん…」
「だからいいよ!謝んないで」

本当に、優しくていい奴だ。

「本当?」
「え?何が…?」
「保証してくれるって、相手が嬉しいって思うって、保証してくれる?」
「……おう!当たり前だろ!」
「そっか…」

渡してみよう、私が好きなのはあなたですって、言ってみよう、だって、本人が保証してくれたんだから、本人が背中を押してくれたんだから……

「あっ、というかさ、ホントに俺にはねーのかよ」
「え?」
「ほら、友チョコってやつだよ!俺お前から友チョコ貰ってない!」

……そっか……

『友チョコ』

その言葉が、こんなに胸に刺さったのは初めてのことだった。

アイツの、少しも私のことを疑っていない、信じ切っている顔を見る。

この人は、私が本命チョコを自分に渡すかもしれないなんて、少しも疑ってない。
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