sweet bitter valentine
本命チョコを用意していない、と言えば嘘になる。けど、それを渡すかどうかは分からない。



アイツの言ったことは嘘ではなかった。

休み時間がくるごとに、女子が一人は教室にやってきて、アイツにチョコを渡して行った。

アイツは得意げに高橋君にピースをしたりしていた。

昼休みなどは、教室に列を作って、女の子が順番にアイツにチョコを渡したりしていた。


本命かどうかは分からない。女の子たちは、アイツにチョコを渡して、「キャーッ」なんて言って、笑顔で去っていくし、アイツの方も、「ありがとー」なんて笑顔で受け取っているけれど、本命チョコを受け取っている、という感じではない。

お互いに、チョコを渡す、渡されるというイベントを純粋に楽しんでいるように見えた。

アイツは決して「こんなのもらえない…」なんて興ざめなことをいうような奴じゃないから、女の子たちも安心してアイツに渡すことを楽しめるのかもしれない。

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