sweet bitter valentine
「…ん…?何か入ってるけど…?」
「!?」

回想に浸っていた私は、突然のその言葉に動揺を隠せなかった。

ヤバイ!間違えた!間違えて本命チョコを入れていたビニール袋をアイツに渡しちゃった!

なんでそんな間違いを起こすんだ!と、自分で自分にツッコミをいれた、私のバカ!


「えーっと、これは……」
「──────っだっ…」
「え」
「だめーーーーー!!」

バシッ、と、私はアイツからそのビニール袋を奪った。

「ど…どうした?大丈夫か?」
「………」

心配して、私に聞いてくるアイツを、私は真っ赤な顔で睨みつけた。

「…み…見た…?」
「………」

アイツはちょっと迷って、困ったような顔をして、それから言った。

「………見てねーよ!」

あ、これは見たな……一年の経験からついつい分かってしまうアイツの嘘。

「……なら、良い……」


私は、嘘だって分かってたけど、そう言った。そうして、当初渡すはずだったビニール袋をアイツに渡した。

「…間違えてごめん…これ、使って」
「…おう…サンキュ…」


気まずい沈黙が、私とアイツの間におちる。

私ってホントにだめな奴…

その沈黙を破ったのは、高橋君だった。

「おーい、なにマジ顔してんだよ!モテモテ男子君、今度はお呼びだしだぜ!」

私たちが、教室の扉の方を見ると、可愛らしい女の子が立っていた。



いかにも本命チョコ、というチョコレートを持って。


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