sweet bitter valentine
放課後になると、牡丹雪が降っていた。

傘もってきといて良かった……そう思ったのも束の間、玄関にアイツの背中を見つけて、ぎょっとする。

「高橋、傘もってきてんじゃん、俺も入れてよ」
「入れねーよ!モテ男は女の子の傘にでも入れてもらえよ!」
「高橋君~、一つも貰えなかったからって、僻んじゃだめだぜ♪」
「う、うるせー!」

バカヤローっ!と、高橋君は、叫びながら走っていった。

「あっ!高橋……」

アイツは牡丹雪を見上げてため息をついた、はあ、どーすっかなー、という声が聞こえる。

アイツは、諦めたようにくるりと振り返った。学校でしばらく雪が収まるまで待とうと思ったのだろう。

気まずいから、こっそり帰ろう、と、アイツの目に映らないところから帰ろうとしていた私は、アイツと思い切り目が合った。

「あっ!お前、傘持ってんの!?」
「…持ってる…」
「入れてくれよ、方向同じだよな」

アイツは笑顔でそう言った、昼休みのことなんて、何にもなかったかのように。

…まあ、アイツにとってはそうなのだろう。

「いいよ、結構大きい傘、持ってきてるし」
「サンキュー!高橋の奴が薄情でさあ……」

アイツは、いつも通り馬鹿話をしながら、私の持っていた傘を自然に持って、私の隣を歩き始めた。

いつも通り優しいアイツ、私はホントにだめな奴、そう思って、小さくため息をついた。
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