天敵は恋仲
そんな昔の思い出を頭を振って消し去り、授業の為の資料を取りに行こうと、全科目共通の資料室へ向かう。
平日の今日は午後からしか授業がないため、休日よりはゆっくり準備が出来る。
資料室でお目当ての参考書を探していると、資料室のドアが開けられた音がした。
「やちる?」
「千佳!」
そこには、同期で一番仲がいい三島 千佳が笑顔で立っていた。彼女は数学を専門としていて、物理も教えることが出来る強者だ。
「何してるの?」
「参考書探し。千佳は?」
「私もよ。センター頻出題をチェックしておきたくて」
「勝負の夏休みが来るもんね〜」
互いに違う列の棚を見ながら、ぽつぽつと会話をした。千佳は、何を言っても受け止めてくれる、頼れる存在だ。
あ、参考書発見。
やっと見つけて千佳に見せると、私も見つけた、と笑顔を向けられた。
「あ、そういえば、また清水先生と喧嘩したの?」
「喧嘩っていうか、ただの言い合いだよ」
「生徒の前ではやらないでよ?まったく」
はーい、なんて間延びした声をあげれば、千佳は呆れたような目を私に向けた。
その目から逃げるように資料室から出て、国語科の部屋に戻ると、さっきまで話題に出ていた奴が睨むように私を見た。