天敵は恋仲
「…何よ、その目」
「別に」
別になら、睨むんじゃないわよ!!
なんて言ってやろうと思ったけれど、千佳と話したことを思い出し「あっそ」だけで抑えてあげた。
それに清水先生も何も言わなかったから、本当にただ睨んできたのか、とちょっとイラッとした。
荒々しく自分の席に座り、持ってきた参考書を広げると、その横にアイスコーヒーが置かれた。
「まーたイライラしてる?」
はっとして顔を上げると、そこには平野 学先生の優しい笑顔があった。
彼は私より二つ上で、優しくて仕事も出来て、生徒からも人気がある、完璧という言葉が似合う男性である。
「…まぁ、多少は」
「本当に清水先生と青葉先生は仲良しだなぁ」
「だからそれやめて下さいってば」
コーヒーありがとうございます、と呟けばうん、と軽く笑って参考書に目を向けられ、話す内容は授業の話。
あまり他の先生とは塾内でプライベートの話はしない。それが少しだけ煩わしく、助けられてる面もある。
平野先生が好きなわけじゃないけど、なんとなくプライベートが気になる、なんていうのはイケメンに対するミーハーな感情だと思う。
ま、どっかのハゲにはなんの興味も沸かないけどね。