先生と、ひとつ屋根の下
その日は先生の好きそうなDVDを借りに近所のレンタルビデオ店に行ったり、買い物したり、先生に数学を習ったり、
あっという間に時間が過ぎた。
「…事故に遭わなきゃ、また今年も栞を連れてドライブでもしたんだけどな」
「別に大丈夫ですよ。先生と一緒にいられれば!」
「……来年は、また、一般的な恋人みたく、イルミネーションでも観に行くか」
「あ…はい」
「来年は堂々と町を歩けるからな」
そうだ。
一応今も結婚してるけど、
やっぱり教師と生徒っていう垣根があるから、
表立ってイチャイチャしたり出来なかったけど………
来年か……
「なんで顔赤くしてるの?」
「え、赤いですか?」
「ん。……馬鹿」
ばっ…馬鹿!!?!?
「馬鹿みたいに人を好きになるって、こういう瞬間のとき思うんだよね」
そのとき、先生が言った言葉はよく分からなかったけど、
でもあまりに、いとおしそうに私を見つめてくるから
いつか私も、
先生の気持ちが分かるようになるかもしれないって、
思った。
「ケーキは明日作りますから!」
「うん。」
もう来年のことも考えるって、
素敵だな、って、密かににやけてしまった。