先生と、ひとつ屋根の下
妹さんの名前は、栗原めぐみさん。
シングルマザーになるらしい。
「で、この子は遼(りょう)。」
「お前、産んだときに連絡くらいしろよ」
「それどころじゃなかったの。お母さんがね、来てくれて」
「…そっか」
あれ、
先生の顔が、曇ったような気がした。
『両親と音信不通』的なこと、そういえば前に言ってたな……。
「元気だった?」
「相変わらずだよ。お兄ちゃんのこと、気にしてたよ」
「……そうか。
で?何しに来たんだ?」
「お金返しにきたの。借りっぱなしだったから」
お金…?
よく分からないから、遼くんといないいないばあして遊ぶことにした。
私が聞いていい話かどうかも分からないし。
って言っても、私が一人で遊んでるようなものだけど。
「今、シングルマザーのための安いアパートに住んでるんだ。生活保護も受けられそうだし。ありがとうね、お兄ちゃん」
「うん」
「結婚おめでとう。栞ちゃん、うちのバカ兄貴をよろしくね。」
「は、はいっ!こちらこそ、よろしくおねがいします…っ」
「おー元気だね、遼の面倒観てくれてありがとう。じゃね、また」
あっという間にめぐみさんは帰ってしまった。
美人なのに飾ってなくて、
素敵な人だったな……。やっぱり。