先生と、ひとつ屋根の下
名前
「──桜の蕾がそろそろ目を覚ますような季節になりました。皆さんの卒業を祝うような春の陽気に包まれて、私から挨拶させてください」
今日は、卒業式。
3年生全員、胸元に花をつけて、
背筋を伸ばして、
ステージの上の校長先生を見上げている。
寒さが吹き飛んで、暖かい日差しが優しく体育館のなかを照らす。
「──4月から皆さんは、それぞれ自分の決めた進路へ向けて、歩き始めることと思います。」
先生。
後ろから見えてますか、私のこと。
漆黒のスーツを朝見たけど、
女子たちが騒ぐようなかっこよさだった。
廊下で見かけるのが嬉しくて、
次の教科も頑張れた。
先生。
そんな先生をもう学校で見ることはなくなっちゃうんですね。
でも今日からは、
堂々と、夫婦でいられるんですね。
「──つまずきながら、後ろを振り返りながらでも、一生懸命歩き続けることを願って、式辞とさせて頂きます」
校長の式辞が終わり、卒業生の呼名が始まった。