君はいつも突然なんだ。
突然の。

「僕さあ、今、猛烈にコンビニスイーツの新作抹茶プリンアラモードが食べたいんだよね」

宇宙(そら)が顔を机に突っ伏したまま言った。
「ほう、宇宙くん、キミは常に突然何かを言うの、どうかしていただけないかね」
「宇治抹茶のプリンアラモードとか、もう、抹茶好きのツボをついてくる」
「お願いだから人の話を聞け」
「プリンアラモード……それも期間限定なんだって。あー、これ食べ逃したら、僕生きていけないと思う」
「ねえ私の話聞いてた?ねえ?」
「プリンアラモ………」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

窓側に止まっていたらしきカラスが、バッサバッサ羽をばたつかせて飛んでいった。
これが小鳥だったら。うぐいすだったら。カナリアだったら。
私の心はきっと、浄化されたと思う。
「宇宙!今日は補習じゃないの?!」
「うん…。補習………?え?………………え?」
少し癖のある茶髪が、目の前でふわふわ揺れている。
「ほら…中間の」
「あぁ!………あっ」
「行かなくていいの、もう放課後だよ?教室でだらだらしてる場合じゃないんじゃないの」
「あー……もう、いいよ。めんどくさい。ダルい。プリンアラモード。」
「まだ言ってる……」
水沢 宇宙。
私、莉沙の目の前であくびをしているのは、女子より可愛い男子だ。
目が大きく、小顔で小柄。頭はちょっとアレだが、運動もちょっとアレだが、とにかく可愛いから許されるのである(by女子一同)。
そんな宇宙は、一応、私の幼馴染である。
まるで漫画みたいな境遇だ。大丈夫、ここから恋へ発展することはない。
それに、私には幼馴染であったという記憶がないのだ。
宇宙が幼馴染だと言いはっているから私もそうだとは思っているけど、私自身は全く覚えがない。だから、一応、だ。

わがままで、気まぐれで、常にスイーツを求めるスイーツ男子。作る方じゃなくて、食べる方のだ。
何でこんなに体が細いのか…。本人曰く体質だが、その体質、分けてほしい。切実に。

「じゃ、宇宙、帰ろう。補習のこと、私知らないからね?」
「うん……あー眠い」
「起きて!プリンアラモード食べるんでしょうが」
「え、莉沙、ついてきてくれるの」
「いや、家の方向一緒だしついで」
「とか言っちゃって」
「はい?」
「僕と一緒に居たいだけなんじゃないの」
「自意識過剰」
「そうかな」
「そうだよ……」



宇宙が顔を上げた。のと、椅子を蹴って立ち上がったのがほとんど、同時だった。


気づいたら、

倒れた椅子の衝撃音がこだまする教室の中で、私の中で時は止まっていた。








「……っは……………………………」






酸欠になりかけた。





いまのはなんだ。


考えた。必死に脳をフル回転させている…つもりだ。




宇宙が顔を上げるでしょ、立ち上がるでしょ…あれ?


なに、


つまり、いまのは、





き……………きききききキスということで宜しいのでしょうか………?!



宇宙はペロッと唇を舐めていた。


「ちょっと、宇宙?!」
「んー?帰ろう」
「待って、今、きっ、キス……………」
「したよ?」
「何当たり前みたいな顔してんの!私としては大問題なのっ!」
「なに、まだ足りないの」

カタッ…………………。








「…………………………っ、はぁ、あ…………そんなこと、言ってないでしょーが……」
「顔真っ赤だよ?」
「うるさいっいっぺん黙れ!」

「黙らないよ。今から大事なこと言うもん」
「はあ?」
「好き」
「あーはいは……………………えっ?」
「だから、好き。好きです。大好き。」
「超大事じゃんっ!何でそんな、ナチュラルに言うの!一瞬聞き流したよ!」
「だから、先にキスしたのに」
「急だよ!」
「で、返事は」

誰もいない教室が、やけに静かに感じられる。

「えっと、宇宙は私のことが好きなの?」
「そうだから告白したしキスもしたんじゃん」
「え、宇宙が?凡人の私を……やべえ自分で言っといてダメージが半端ない」
「凡人じゃなくて、僕は可愛いと思うし好きだから」

大きな目が真剣に私を見つめた。
ああ、本気なんだ。宇宙は私のことを本気で好きなんだと、今、その時気づいた。


「うん」
「え?」

「告白の返事」


「ああ…………よかった」




ホッとしたように彼は笑った。
どうしようもなく、宇宙は可愛かった。
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