君が好き~16歳ママの恋~
病室で目を覚ました時、一番に目に入ったのは、お母さんだった。
『華恋、よく頑張ったね』
『赤ちゃんは?』
『ここよ』
お姉ちゃんが赤ちゃんを抱いていた。
『ほら、抱っこしてあげて?』
そう言って渡された赤ちゃんは、とても重く、暖かった。
その温もりから離れたくなくて、流れた涙も拭わなかった。
生まれてきたら一番に伝えようと思っていたこと。
『ありがと……。生まれてきてくれて、ありがとう……』
どんな父親でも、この子にはありがとうと伝えたかった。
だって、この子の存在が、ズタズタに傷つけられたわたしの心を癒してくれたから。
『泣くのもいいけど、名前、考えろよな』
『女の子だよ』
お兄ちゃんとお父さんに急かされて、うれしさでいっぱいの頭を精一杯動かした。
『夢羽』
『むー?』
『夢の羽って書いて、夢羽。
いつかこの子が夢を持った時に、
その夢が、この子を世界に羽ばたかせてくれますようにって』
『いい名前ね。この子にぴったり』
お母さんは夢羽の頭をなでてくれた。
『よし、書道家の先生に名前を書いてもらって、家に飾る』
『え、ちょ、お父さん?』
私とお姉ちゃんが止める前に、お父さんは病室を出ていった。
『好きにさせてやりなさい。初孫で、うれしいのよ』
『孫って、思ってくれるの?』
『何言ってるの。当然でしょ?』
『ふ、ふえぇぇ……』
『もう、華恋。
母親になったんだから、泣き虫は卒業しなさい』
お姉ちゃんに言われても、しばらくは泣きやめなかった。