君が好き~16歳ママの恋~
「騙されてないよ。
オレは、こいつの実の父親が人を殺したことも、
子持ちなのも、
その子どもがどうやってできたのかも、
全部知ってる。
知ってて、それでも好きなんだよ。
こいつの娘も、オレのことおにーちゃんって呼んでくれてる。
変わったところなんか何もない。
ただのかわいい女の子だよ」
「でも……」
「確かに子どもを生む時の華恋は、普通の女子中学生ではなかったと思う。
ひとりの母親だったんだ。
だから、学校では無表情だけど、娘の話になるとおしゃべりだし表情も豊かだ」
オレは、まだ華恋と出会ってそんな長くないけど、少しくらいは華恋のことを分かったつもりだ。
「でもその女は、自分の過去バラされて、怒った。
隠したかったってことでしょ?」
「違うな。確かにつらい過去を思い出したんだから、悲しかったとは思うけど。
華恋が怒ったのは、娘のことを悪く言われたからだ。
自分の子どもの悪口言われて、正気でいられる母親なんてどこにもいないだろう。
母親はな、命がけで子ども産んで、
たくさんの願いを込めて名前をつけるんだよ。
お前たちにはその大変さなんか、分からないだろうな」
その日、華恋は早退した。
そして、翌日から学校に来ることはなかった。