あたしの正義
「とりあえず今日はこれだけ。また次の撮影のときみんなよろしくね。」
笑顔でそういった如月さんは高いヒールを鳴らしながらこの場を立ち去った。
途端に放たれた緊張の糸。
如月さんがいるだけでこんなにも疲れるんだ。
「雛さん。」
「なに?」
「ちょっとちょっと!なに雛ちゃんに話しかけてんの!」
「じゃあ里香さんも。よかったらこの後ご飯でもどうですか?」
「え?」
まさかのご飯の誘い。
この子結構常識ない?
だって立場的には新人。
あたしは一応ここのモデルとしての暦は長い。
そんなあたしに堂々とご飯の誘いなんて…。
変な子。
でも正直、あたしは他のモデルからも壁を作られ、あまり話しかけてもらえることはなかった。
だから嬉しくもある。
里香はしょっちゅう話しかけてくるけどね。