あたしの正義


百瀬雛



「雪音っちどうする?」

「………どうするって言われてもね。困るってば。」


柔らかい猫っ毛をクシャクシャっとさせて、「あーっ!!」と唸り始めた。

むしゃくしゃした時によくやる行動だ。
そして楽譜を手にして慌ててたくさんのことを書き込む。




「俺は伴奏やるから雛は司会できる?」

「大丈夫だけど…あれからピアノに触れてないよね?」

「なんとかなるって。」



雪音っちは趣味でよくピアノを弾いていた。
それは秘密にしていたけどね。
高校の時あたしが落ち込んでいたら励ますように弾いてくれた時があった。


パッとパールが飛び交うようなワクワクした曲。
光が背中を押してくれるような暖かい曲。
雪音っちの優しさが溢れた曲。


どれもあたしにとっては涙が出るほど嬉しい音楽だったんだ。


それからは仕事が忙しくてピアノには触れていないって言っていたけど……大丈夫なのかな。





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