アイより確かなナミダ
雪のように儚い想いと
(4)
冬休みに入ってからは毎日が地獄だった。
宿題に追われるし、学校はない。
こんなにつらい冬休みは今までなかった。
きっと、センパイを知らなかったから……。
そんな私の救いは一日に三度届くセンパイからのメールだった。
センパイはなぜか決まって食事の内容をメールしてきた。
今朝のメールも一時間ほど前に届いた。
『おはよう。今朝はなにもなかったから昨晩の残り物を漁ってみた。肉じゃがが残っていたから、ご飯を温めて肉じゃがをのせて食べた。すると母さんが「お昼にするつもりだったのに!」って怒って。こりゃお昼は抜かれるかな?』
ひょろりとしたセンパイがお昼を抜かれてしまったら、いつか骨と皮だけになってしまうのではないのだろうか……と心配に思うと同時に、なにも考えずに肉じゃが丼を作ったセンパイを思って笑ってしまった。
『おはようございます、センパイ! 私は朝ごはんにトーストを食べました。ハムがあったのでのせて、ハムトーストです。サンドイッチみたいで、思わずセンパイを思い出して笑っていました。センパイはお昼ごはんによくサンドイッチを持ってきていましたからね』
返事はお昼過ぎになるまでこない。
しかも、大抵はまたなにを食べたのか、という報告。
会話としては成立していないことなどざらにあるけれど、それでも高校のいつもの場所でもそんな感じで過ごすことはよくあるから気にはならない。
それよりも気になるのは――。
センパイが抱えている、過去のことだった。
『僕が高校一年生の時に、当時の担任だった女性教師と恋愛関係に陥った末、無様に捨てられた』
センパイの今の気持ちが、知りたい。
けれど、それを訊く勇気はまだ持てていなかった。