大好きな君の嘘
出たのはいいが

行く当てがない


いつかの蕎麦屋に行くと

女将が覚えてくれていた


「体をこんなに冷やして!!
もう、産み月やないやろか?
家の人はなんて?」

「……言えへんかってん」

「ほな……あんた一人で産む気やったんか?
アホやなぁ」

「……」

君菊があんまりにも可哀想で
女将が言った

「家族のどなたかを教えてくれたら
わからんように、引きあわしたる
うちが、話をしてあげるわ」

「言えへん……すみません
うち…… 堪忍 」


どうしていいのかわからなくて

蕎麦屋を出た


「待ちなはれ!!行くとこあんの??」



(行くとこなんかない…
頼れる人もおらん…
でも……産みたい……)




腹が痛み、蹲る



(何…?痛い!!
どうしょ……痛い!!)



人目に触れないように


空き家へ


(これは、陣痛やろか……
あかん……
痛すぎて死ぬ……
産みたい……産みたい……)



とにかく、痛みに耐えた

痛みがひいた時には、布やら水やら
用意した

しばらくこの家にきていなかったが

山崎は、休憩にちょくちょく来ていた為

火鉢があり

火をつけて暖をとる


(怖い……
うちがしっかりせなあかんのやけど
怖い…)






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