大好きな君の嘘
「土方さん 終わりましたよ」

「おう 早かったな ありがとうよ」

「山南さんらしいですよ
綺麗にまとめてありましたから
ずっと前から計画していたんでしょうね」

「だろうな…
思いつきで馬鹿なことする人じゃねぇ
相当な覚悟だろ
総司が来ることまで見越して
峠で待ってたんだろ」

「ええ 実は、僕が山南さんを見つけた時
ニコニコして嬉しそうに
『思ったより早かったですね』なんて
言ったんですよ」

「本音言うとよ……山南さんを頼りにしてた
山南さんがいるから、安心して
皆に厳しく出来たんだ
山南さんがいるから、無茶も出来たんだ
山南さんが…… いたから……」


「土方さん……」


こんなにも弱音を吐く土方を初めて見た
沖田は、介錯をした感触の残る手を
握りしめた


「僕がいますよ
頼りないかもしれませんけど…」

「いや、頼もしいよ
ありがとうな 総司」










(山南さんが屯所の移転に反対してから
孤立した
皆を避けて、部屋に籠もることが増えた
俺は、山南さんの異変に気づいていたのに
明里の言う通りだ
山南さんが切腹することになったのは
……俺のせいだ)






土方は、自分を責めた


しかし、それは他の幹部らも同じだった












しばらくして、バタバタと慌ただしく

屯所が西本願寺へ移転した












桜の咲く季節になった頃



舞踊会が二条城で開かれた


君菊と明里は、二人で舞を披露した



会が終わると、徳川慶喜は
すぐに君菊のもとへ




二人でにこやかに話をする姿を見ていると
明里が声を掛けてきた

「土方はん… この前は、すんまへん
うち… お嫁に行くことになりまして
今日が最後の舞台どす
君ちゃんと一緒に舞えてよかった
土方はん? 君ちゃんな
土方はんの気持ちに、これっぽっちも
気づいてしまへん
もっと、ちゃんと言ってあげてな
君ちゃんをよろしゅう」

「ありがとう 幸せにな」






明里が嫁いで行った










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