もしも沖田総司になったら…
見知らぬ彼
死に方としてはマシな死に方だったかもしれない。労咳を患った身体だったから、もっと苦しみながら死ぬのかと思ったら最期はあっけなく眠るように死んだ。
…ただ、ここは何処だろうか?
何かがあるわけでもない、真っ白な空間。
まさか眠ったように死んだと見せかけて本当に眠っただけなのだろうか?いや、あの状態で再び目を覚ますことは無いだろう、私の勘が告げている。確かに私は死んだらしい。
…ここは所謂天国といったところだろうか、それとも真っ白な世界に反して意外と地獄という落ちもあるかもしれない。
「あれ?キミは…?」
「え?」
よくよく目を凝らしてみれば視線の先に一人の…男性がいた。その袴姿は見覚えがある。私が幕末の時代のなか、沖田として身につけていたものとそっくりなものだ。袴自体は幕末の世にはどこにでもありそうなものだけれど、色も柄も同じものだったからついつい口から自然と名を尋ねてしまう。
「…もしかして、沖田総司…さん?」
「…鏡で顔を見ただけだけれど…キミが藤原友里って子?」
お互いにどんぴしゃだ。
「ボクは沖田総司で正解。ところでここ何処?土方さんたちはいないの?」
「私も藤原友里で合ってます。…もっと子どもっぽい人かと思ってた…」
「今、何かすごーく失礼なこと言わなかった?」
なるべく聞こえないように小声で呟いたつもりだったけれど、沖田…もとい沖田さんにはばっちり聞こえてみたいだ。
「…沖田さん…。ごめんなさい…貴方の身体で暫く過ごしていたんですけど…その…」
「…別に最後まで言わなくても良いよ。労咳で死んだんでしょ?…戦って死ねなかったのは残念だったけど、キミには苦しい思いさせちゃったんだよね…一応、ごめん…」
沖田さんでも他人に向かって素直に謝ることがあることにちょっとびっくりしてしまった。
「ちょっと、呆けていないでよ。ここ何処なの?それにボク、刀が無いんだよね。キミも持ってないみたいだし…誰かに取られちゃった?」
「あ、ここは何処なのか私にも分からないんです。…刀は…あー…もしかしたら実家のお姉さんのところに持って行かれたのかもしれません」
「はあ?!なんでそこで姉さんに預けるわけ?!」
「私が…死ぬ間際に土方さんにそう言ったんです。沖田さんの刀は信頼置ける人のところに預けて欲しいって…」
「…じゃあ、ボクの身体は土方さんの目の前で逝っちゃったわけなんだ…そっか…」
「…迷惑でした、か?」
「いや、別に。土方さんにボクの死に顔見られたっていうのは気に入らないけどね」
…想像していた通りに子どもっぽい性格のようだ。
私が死んでしまったということはここは死人の世界、それこそ天国か地獄かの世界かもしれないが、沖田さんもここにいるということは私の本来の身体も死んじゃったのだろうか?
「…あの、私の身体も…生きることが出来なかったんでしょうか?」
「え?さぁ?ボクは普通に病室のベッドに戻って退屈だったから昼寝してたはずだけど」
「え?」
じゃあ、まだ私の身体のほうは無事なのか…?でも、そう考えると私たちが同じこの場にいることが妙なことじゃないだろうか?
あれこれ考えていると近寄って来ていた沖田さんがぽんぽんと私の肩を軽く叩いてニコリと無邪気な子どものような笑みを向けてくれた。
「…とにかくツライ想いをさせてごめんね?それからありがと。キミには感謝してるよ。…あの子の言う代償が何なのか結局分からないけど、この状態ならキミは自分の身体に戻れるんじゃない?」
「え、でも沖田さんは…」
「ボクのことは気にしない気にしない!…ほんの一時でもキミに会えて良かったよ、じゃあね?」
彼に言われながらグイグイと背中を押されていくものだから何処に行くかも分からないのに私は真っ白な世界に吸い込まれるままに強く目蓋を閉じた。
彼の言っていた代償とは何の話しだろうか?それがとにかく気になったものの白過ぎる世界を視界に入れ続けるには眩しくて暫くの間、目蓋を開けることが出来なかった。
「あ。姉さんによろしくって伝えるの忘れちゃった。…ま、良いか…ボクはこのまま死んで…運が良ければ生まれ変わるのかな…?」
ボクは、もう生きるとか死ぬとかどうでも良かった。
平成っていう幕末の時代から考えれば何十年も先の時代を少しを間だけでも堪能することが出来たし、姉さんの生まれ代わりだという少女にも出会うことが出来た。
代償…。
出来れば…また、生きたい。
侍として、新選組の組長の一人として戦って生きたい。けれど、それはどうやら無理なようだ…。
でも、不思議と悔いは無いんだよ?
さてさて、ボクがこれから行くのは天国かな?地獄かな?…やっぱり地獄かな?今までたくさん人を斬って来たし、ボクには相応の場所かもしれない。ただ、愛刀が無いのが寂しいところだけどね。
…ほら、ボクの意識も霞んできた。次に目を覚ますときにはきっと目の前には怖いこわ~い閻魔様とかがいるんだよ。
…ただ、ここは何処だろうか?
何かがあるわけでもない、真っ白な空間。
まさか眠ったように死んだと見せかけて本当に眠っただけなのだろうか?いや、あの状態で再び目を覚ますことは無いだろう、私の勘が告げている。確かに私は死んだらしい。
…ここは所謂天国といったところだろうか、それとも真っ白な世界に反して意外と地獄という落ちもあるかもしれない。
「あれ?キミは…?」
「え?」
よくよく目を凝らしてみれば視線の先に一人の…男性がいた。その袴姿は見覚えがある。私が幕末の時代のなか、沖田として身につけていたものとそっくりなものだ。袴自体は幕末の世にはどこにでもありそうなものだけれど、色も柄も同じものだったからついつい口から自然と名を尋ねてしまう。
「…もしかして、沖田総司…さん?」
「…鏡で顔を見ただけだけれど…キミが藤原友里って子?」
お互いにどんぴしゃだ。
「ボクは沖田総司で正解。ところでここ何処?土方さんたちはいないの?」
「私も藤原友里で合ってます。…もっと子どもっぽい人かと思ってた…」
「今、何かすごーく失礼なこと言わなかった?」
なるべく聞こえないように小声で呟いたつもりだったけれど、沖田…もとい沖田さんにはばっちり聞こえてみたいだ。
「…沖田さん…。ごめんなさい…貴方の身体で暫く過ごしていたんですけど…その…」
「…別に最後まで言わなくても良いよ。労咳で死んだんでしょ?…戦って死ねなかったのは残念だったけど、キミには苦しい思いさせちゃったんだよね…一応、ごめん…」
沖田さんでも他人に向かって素直に謝ることがあることにちょっとびっくりしてしまった。
「ちょっと、呆けていないでよ。ここ何処なの?それにボク、刀が無いんだよね。キミも持ってないみたいだし…誰かに取られちゃった?」
「あ、ここは何処なのか私にも分からないんです。…刀は…あー…もしかしたら実家のお姉さんのところに持って行かれたのかもしれません」
「はあ?!なんでそこで姉さんに預けるわけ?!」
「私が…死ぬ間際に土方さんにそう言ったんです。沖田さんの刀は信頼置ける人のところに預けて欲しいって…」
「…じゃあ、ボクの身体は土方さんの目の前で逝っちゃったわけなんだ…そっか…」
「…迷惑でした、か?」
「いや、別に。土方さんにボクの死に顔見られたっていうのは気に入らないけどね」
…想像していた通りに子どもっぽい性格のようだ。
私が死んでしまったということはここは死人の世界、それこそ天国か地獄かの世界かもしれないが、沖田さんもここにいるということは私の本来の身体も死んじゃったのだろうか?
「…あの、私の身体も…生きることが出来なかったんでしょうか?」
「え?さぁ?ボクは普通に病室のベッドに戻って退屈だったから昼寝してたはずだけど」
「え?」
じゃあ、まだ私の身体のほうは無事なのか…?でも、そう考えると私たちが同じこの場にいることが妙なことじゃないだろうか?
あれこれ考えていると近寄って来ていた沖田さんがぽんぽんと私の肩を軽く叩いてニコリと無邪気な子どものような笑みを向けてくれた。
「…とにかくツライ想いをさせてごめんね?それからありがと。キミには感謝してるよ。…あの子の言う代償が何なのか結局分からないけど、この状態ならキミは自分の身体に戻れるんじゃない?」
「え、でも沖田さんは…」
「ボクのことは気にしない気にしない!…ほんの一時でもキミに会えて良かったよ、じゃあね?」
彼に言われながらグイグイと背中を押されていくものだから何処に行くかも分からないのに私は真っ白な世界に吸い込まれるままに強く目蓋を閉じた。
彼の言っていた代償とは何の話しだろうか?それがとにかく気になったものの白過ぎる世界を視界に入れ続けるには眩しくて暫くの間、目蓋を開けることが出来なかった。
「あ。姉さんによろしくって伝えるの忘れちゃった。…ま、良いか…ボクはこのまま死んで…運が良ければ生まれ変わるのかな…?」
ボクは、もう生きるとか死ぬとかどうでも良かった。
平成っていう幕末の時代から考えれば何十年も先の時代を少しを間だけでも堪能することが出来たし、姉さんの生まれ代わりだという少女にも出会うことが出来た。
代償…。
出来れば…また、生きたい。
侍として、新選組の組長の一人として戦って生きたい。けれど、それはどうやら無理なようだ…。
でも、不思議と悔いは無いんだよ?
さてさて、ボクがこれから行くのは天国かな?地獄かな?…やっぱり地獄かな?今までたくさん人を斬って来たし、ボクには相応の場所かもしれない。ただ、愛刀が無いのが寂しいところだけどね。
…ほら、ボクの意識も霞んできた。次に目を覚ますときにはきっと目の前には怖いこわ~い閻魔様とかがいるんだよ。