もしも沖田総司になったら…
「お前…その身体で出掛ける…だと?」
気のせいだと良いのだが、土方さんの声色が少々今まで聞いてきたものよりも低いもののような気がする。もしかして怒らせてしまったのだろうか?
「…は、い…。だって、ずっと一日中ここで寝て過ごすなんてそろそろ耐えられなくなってきたんですよ?!」
私だってそろそろ精神的に耐えられなくなってきているのは本当のことだ。特に用が無ければ布団に横になっているか、刀の手入れをするだけ。それだけで一日を終えてしまうなんてツラ過ぎる!
「…斎藤、お前今日の予定は?」
「…自分は、特には何も。本日の市中見回りも自分は夜からですので…」
「…少しだけだぞ」
「え?」
「今の時間帯だったらそうそう街中で騒動が起きるようなことにはならねぇだろうが、一応斎藤と一緒に行くなら外出許可を出してやる。…が、遅くならねぇうちに帰って来いよ」
斎藤さんに相談してみて良かった。斎藤さんと一緒であれば万が一街中で迷うことがあっても心配はないし、どこぞの武士たちに襲われるようなことがあったとしても大丈夫だろう。
「あ、ありがとうございます!」
ここは常識を持つ人であれば素直に礼を言っても普通のことなのに、なぜか斎藤さんからは目を丸くされて驚かれ、土方さんからは可笑しそうに小さく笑われてしまった。別にお礼を言っただけなのに。…普段の沖田は一体どんな人間関係を築いて接していたのか凄く不審に思ってしまう。
「あ。…外出するときって刀は持っていたほうが良いですかね…?」
侍であるいじょう刀は常に常備していたほうが良いのかもしれないが、今この場において刀を腰元に差しているのは斎藤さんだけである。土方さんは屯所の中ということでたまたま外しているのかもしれない。が、外に出掛けるとなれば刀は必要になるだろう。ただ、沖田はどうやら二本の刀を戦地で使用しているらしいが二本とも外出で必要となるだろうか?と不思議に思ってしまう。だって、普通に現代社会を過ごしてきた私としてはひと振りの刀を手に持つだけでも重いのだ。もうひと振り持つとなるとそれだけで身体に負荷がかかってしまう。
「…なんだか総司と話してる感じがしねぇな…イマイチ、総司らしくねぇ発言が見られるんだが…お前はいつも二本とも差して出掛けてるぞ?まぁ、無人の部屋に置きっぱなしにして誰かに触れられるのが嫌だったってのもあるかもしれねぇけどな?」
二本とも持って出歩くのか!
…少しは予想していた答えだったけれど、やっぱり鍛えていない身体に二本の刀を差して歩くというのはツライな…。
嫌そうな顔を斎藤さんは見逃さなかったらしく「刀ならオレが持つか?」と横から口を挟んできたことにはびっくりしたもののさすがに既に刀を差している斎藤さんに二本もの刀を持たせるのはなぜか悪い気がしてしまって渋々と左腰に刀を差すと出掛ける準備を始めた。
「…何も無ぇとは思うが、無茶はするんじゃねぇぞ?」
「…承知しました」
「はい」
ズシッと刀二本分の重みが身体の左側に掛かるとやっぱり重くて身体の重心が傾きそうになるが土方さんは注意を促すように告げると背中を向けて去って行ってしまった。斎藤さんは出掛ける準備といったものをしなくても良いのだろうか?と思いながら土方さんとは異なる服装をしていることに気がつく。
土方さんは袴のような服装をしているが、斎藤さんは着流しを着用だ。私…もとい沖田と言えばどちらかと言うと袴姿をしている。寝るときには斎藤さんのような着流し姿になるが胸元が少々落ち着かなくなることがあるので個人的には袴姿で過ごすほうが楽だったりするのだ。
「…一くんは、そのまま出掛けて平気?何か必要なものとか部屋に忘れ物とかない?」
現代で言うところの外に遊びに出掛けていく小学生辺りに問いかけるような発言の内容に呆れられてしまうかと思ったが意外にも真面目に斎藤さんは応えてくれた。
「いや、特に無いな」
「…じゃあ、出掛けよっか。どこに行こうかな~…あ、甘いものでも食べたくない?お団子とか」
現代的には喫茶店、この時代であれば茶店といったほうが無難だろうがそのような甘味処のようなものもきっと存在しているだろう。
甘味の話をしているとふと斎藤さんが柔らかな表情をしていることに気がついた。
「…どうしたの?」
「…いや、甘味に飛びつくところは変わらないようで安心しただけだ」
沖田総司は甘いものが好きだったのか?!
私は本当に何気なく言ったつもりだったのに食の好みは一緒だったようで少し安心した。でも、そこそこの青年が甘味に飛びつくなんてなんとも子どもらしいではないか。沖田の新たな一面を知った私はほんの少し新鮮な気持ちで屯所の外へと斎藤さんと一緒に歩き出して行った。
気のせいだと良いのだが、土方さんの声色が少々今まで聞いてきたものよりも低いもののような気がする。もしかして怒らせてしまったのだろうか?
「…は、い…。だって、ずっと一日中ここで寝て過ごすなんてそろそろ耐えられなくなってきたんですよ?!」
私だってそろそろ精神的に耐えられなくなってきているのは本当のことだ。特に用が無ければ布団に横になっているか、刀の手入れをするだけ。それだけで一日を終えてしまうなんてツラ過ぎる!
「…斎藤、お前今日の予定は?」
「…自分は、特には何も。本日の市中見回りも自分は夜からですので…」
「…少しだけだぞ」
「え?」
「今の時間帯だったらそうそう街中で騒動が起きるようなことにはならねぇだろうが、一応斎藤と一緒に行くなら外出許可を出してやる。…が、遅くならねぇうちに帰って来いよ」
斎藤さんに相談してみて良かった。斎藤さんと一緒であれば万が一街中で迷うことがあっても心配はないし、どこぞの武士たちに襲われるようなことがあったとしても大丈夫だろう。
「あ、ありがとうございます!」
ここは常識を持つ人であれば素直に礼を言っても普通のことなのに、なぜか斎藤さんからは目を丸くされて驚かれ、土方さんからは可笑しそうに小さく笑われてしまった。別にお礼を言っただけなのに。…普段の沖田は一体どんな人間関係を築いて接していたのか凄く不審に思ってしまう。
「あ。…外出するときって刀は持っていたほうが良いですかね…?」
侍であるいじょう刀は常に常備していたほうが良いのかもしれないが、今この場において刀を腰元に差しているのは斎藤さんだけである。土方さんは屯所の中ということでたまたま外しているのかもしれない。が、外に出掛けるとなれば刀は必要になるだろう。ただ、沖田はどうやら二本の刀を戦地で使用しているらしいが二本とも外出で必要となるだろうか?と不思議に思ってしまう。だって、普通に現代社会を過ごしてきた私としてはひと振りの刀を手に持つだけでも重いのだ。もうひと振り持つとなるとそれだけで身体に負荷がかかってしまう。
「…なんだか総司と話してる感じがしねぇな…イマイチ、総司らしくねぇ発言が見られるんだが…お前はいつも二本とも差して出掛けてるぞ?まぁ、無人の部屋に置きっぱなしにして誰かに触れられるのが嫌だったってのもあるかもしれねぇけどな?」
二本とも持って出歩くのか!
…少しは予想していた答えだったけれど、やっぱり鍛えていない身体に二本の刀を差して歩くというのはツライな…。
嫌そうな顔を斎藤さんは見逃さなかったらしく「刀ならオレが持つか?」と横から口を挟んできたことにはびっくりしたもののさすがに既に刀を差している斎藤さんに二本もの刀を持たせるのはなぜか悪い気がしてしまって渋々と左腰に刀を差すと出掛ける準備を始めた。
「…何も無ぇとは思うが、無茶はするんじゃねぇぞ?」
「…承知しました」
「はい」
ズシッと刀二本分の重みが身体の左側に掛かるとやっぱり重くて身体の重心が傾きそうになるが土方さんは注意を促すように告げると背中を向けて去って行ってしまった。斎藤さんは出掛ける準備といったものをしなくても良いのだろうか?と思いながら土方さんとは異なる服装をしていることに気がつく。
土方さんは袴のような服装をしているが、斎藤さんは着流しを着用だ。私…もとい沖田と言えばどちらかと言うと袴姿をしている。寝るときには斎藤さんのような着流し姿になるが胸元が少々落ち着かなくなることがあるので個人的には袴姿で過ごすほうが楽だったりするのだ。
「…一くんは、そのまま出掛けて平気?何か必要なものとか部屋に忘れ物とかない?」
現代で言うところの外に遊びに出掛けていく小学生辺りに問いかけるような発言の内容に呆れられてしまうかと思ったが意外にも真面目に斎藤さんは応えてくれた。
「いや、特に無いな」
「…じゃあ、出掛けよっか。どこに行こうかな~…あ、甘いものでも食べたくない?お団子とか」
現代的には喫茶店、この時代であれば茶店といったほうが無難だろうがそのような甘味処のようなものもきっと存在しているだろう。
甘味の話をしているとふと斎藤さんが柔らかな表情をしていることに気がついた。
「…どうしたの?」
「…いや、甘味に飛びつくところは変わらないようで安心しただけだ」
沖田総司は甘いものが好きだったのか?!
私は本当に何気なく言ったつもりだったのに食の好みは一緒だったようで少し安心した。でも、そこそこの青年が甘味に飛びつくなんてなんとも子どもらしいではないか。沖田の新たな一面を知った私はほんの少し新鮮な気持ちで屯所の外へと斎藤さんと一緒に歩き出して行った。