きみへの想いを、エールにのせて

「結城君、来なかった」


それだけ言うと「やっぱり手術、するみたい」と理佐がつぶやく。


「ねぇ、私のせいかな。私が結城君を応援したりしたから」


3人だけ残った教室で、たまらず声を絞りだすと「違うよ、茜」と泉が慰めてくれた。
でも……。


「早く復帰して欲しいなんて、思わなければよかった。結城君が水泳できなくなったら、どうしよう」


1500メートル自由形でも、彼の泳ぐ姿が見たかった。

でもそれは、本当に彼が望んだことだったのだろうか。


「茜」


ポロポロ流れ出した涙を心配したふたりが私を抱き寄せてくれたけれど、涙が止まることはなかった。


そして、結城君の手術が行われたことを知ったのは、それから三日後のこと。

10日くらい入院になることを、雄介君が教えてくれた。
< 118 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop