きみへの想いを、エールにのせて

「お見舞いですか?」

「あっ、はい。……いえ」


突然看護師さんから声をかけられ慌てた私は、「これ、結城君に渡してください」とマフィンの入った袋を差し出した。


「結城さん、今いらっしゃいますよ?」

「いいんです」


この声が彼に届いていないか心配になりつつ、看護師さんにマフィンを押し付けてその場を離れた。


「待って。名前は?」


背中越しにそう問いかけられたけれど、足は止められなかった。


こんなことしたら、本当は迷惑かもしれない。
また彼を追い詰めたりしたら……と不安になるのは、真夜さんの冷たい目が頭から消えないせい。


だけど……。

カバンの中のスマホが震え、取り出してみると、ラインの新しいメッセージ。


【チョコちゃん。来てくれたの?】
< 120 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop