きみへの想いを、エールにのせて

仕方がない。
25メートルなんとかしなくちゃ。


つった足では、泳ぐなんてとても無理。
プールサイドにつかまりながら手で進むしかない。

幸い浮力があるから、手の力だけでも進むことはできた。
でも……。


どんどん体が冷えてくる。
それなのに頭がぼーっとして……。


「誰か……」


誰か助けて。

やっとのことでプールの半分までたどり着いたけれど、この倍行かなくてはならないと思うと気が遠のきそうだった。

寒い。たまらなく、寒い。


「チョコちゃん!」


そのとき、結城君の声が聞こえた気がした。
でも彼がプールにいるわけがない。

とうとう幻聴まで聞こえたの?と思ったとき……プールサイドをつかんでいた手が握られた。


「どうした?」

「結城君……」


結城君の顔を見たら、途端に涙が溢れてきた。
< 165 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop