きみへの想いを、エールにのせて

表彰台の景色を見たことがある彼が、下位大会から始める勇気は、並大抵ではないだろう。
ましてや一度失敗しているのだから。


「ありがと。やっぱりチョコちゃんは本当の応援団だ」


うれしくて泣けてしまう。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を見られたくなくて、布団を少し上げ顔を隠すと、「ホントは……」と彼が再び口を開いた。


「ホントは、キッパリ辞めたつもりだったのに、筋トレしてた。腰のリハビリのためだと言いながら、腕立てもスクワットも。俺、バカだろ」


そう言いながらクスクス笑う彼に、首を振る。
すると、布団が動いて顔が出てしまった。


「チョコちゃん……」


私の泣き顔を見た彼は、ハッと目を見開き、真っ直ぐに私を見つめる。


「もう、泣かせない。もう、うれしい時しか、泣かせない」

「結城君……」


そんなことを面と向かって言われると、涙が止まらなくなるじゃない。
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