きみへの想いを、エールにのせて

しかも、彼は足にプルブイという浮き輪を挟み、手だけで泳いでいる。
いわゆる"プル"という手のかきの練習だ。


400メートルを10本泳いだ後、200メートル丁寧にゆっくり泳ぎ、クールダウンをした彼は、やっとプールサイドに上がった。

ゴーグルとキャップを外すと、髪から水滴が滴っているのを見て、勝手に胸をときめかせる。

泳ぎ終わったこの瞬間は、いつ見てもかっこいい。


「お疲れさま」

「やっぱり全然遅いな」

「これで?」


思わずそう言うと、彼は「そうだぞ」とクスクス笑う。

水面を滑るようにして進んでいる彼は、まるで魚の様だったのに。


「でも、これからだ」

「うん!」


再び結城君に笑顔が戻ってきた。
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