きみへの想いを、エールにのせて
苦しい決断
香川君の事情がわかったものの、諦めるわけにはいかない。
相変わらずのビラ配りと、“香川君詣で”を続けていた。
「また来た」
「何度でも来ます」
呆れたような顔をする彼は、教室に入っていってしまう。
今日もダメかと帰りかけると……。
「榎本さん、だっけ?」
「はい」
うしろから香川君の声がして振り向くと、再び廊下に出てきていた。
「話、聞いてやるよ」
「ホントに!」
やった。一歩前進。
「今日の放課後、中庭で」
「わかりました」
「よし、ひとり確保!」くらいの気持ちだった。
足しげく通った甲斐があったと。
そしていよいよ放課後。
結城君には勧誘作業してから部活に行くと告げ、ひとりで中庭に向かった。
結城君に報告するのは、入部が決定してからでも遅くない。