きみへの想いを、エールにのせて

彼の隣を歩けたら……学校に行くときもこうして手をつなげたら……。

もう叶わなくなってしまった夢を心の中で唱えながら、彼に従って歩いた。


「はぁ、やっと空いた」


乗り換えると車内は空いていた。
それが少し寂しい気がするのは、彼が手を離したからだ。

ふたり並んで座ると、窓に映る自分にハッとした。

私、最近心から笑ってない。

卓君といるときはもちろん、結城君と一緒にいるときも、心から笑えない。


「一度、試合に出てみようかと思ってる」


電車を降り、家へと向かう道を歩きはじめると、突然口を開いたのは結城君の方。


「ホントに?」

「うん。もちろん下位の大会だけど、今の実力を知っておきたい」


それは勇気のいることなのかもしれない。
最後まで泳ぎ切れなかったあの大会から、彼は一度も出場していない。
< 243 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop