きみへの想いを、エールにのせて
彼の隣を歩けたら……学校に行くときもこうして手をつなげたら……。
もう叶わなくなってしまった夢を心の中で唱えながら、彼に従って歩いた。
「はぁ、やっと空いた」
乗り換えると車内は空いていた。
それが少し寂しい気がするのは、彼が手を離したからだ。
ふたり並んで座ると、窓に映る自分にハッとした。
私、最近心から笑ってない。
卓君といるときはもちろん、結城君と一緒にいるときも、心から笑えない。
「一度、試合に出てみようかと思ってる」
電車を降り、家へと向かう道を歩きはじめると、突然口を開いたのは結城君の方。
「ホントに?」
「うん。もちろん下位の大会だけど、今の実力を知っておきたい」
それは勇気のいることなのかもしれない。
最後まで泳ぎ切れなかったあの大会から、彼は一度も出場していない。