きみへの想いを、エールにのせて
ずっとこのまま閉じ込めておいて?
そうしたら私は笑っていられるのに。
「チョコちゃん。どうして……」
切なげな彼の声が私を揺さぶる。
「香川といて辛いなら、俺が……」
その言葉を聞いてハッとした。
結城君が水泳に専念できるように陰で支えると決めたのに、こんなことで揺らいだりしたらダメ。
その先の言葉を聞きたいのに、きっと聞いてはいけない。
「ごめん」
ねぇ、結城君。
私のこと、少しは好きでいてくれるのかな。
もし、そうだとしたら、それだけで頑張れる。
たとえ叶わない恋でも。
彼の胸を押して離れると「送ってくれて、ありがとう」とだけ言い残して走り出した。
「チョコちゃん!」
うしろで彼が私をそう呼んだけれど、振り向くこともしなかった。
結城君は『必ずリレーでも全国に行く』と言っていた。
ずっと目標にしてきて目の前でするっと逃げてしまった夢を、どうにかして叶えてあげたい。
もちろん、泳ぐのは私ではないけれど、せめて目指せる環境を整えてあげたい。
それには、やっぱり水泳部が必要だ。
「結城君……」
部屋に駆け込むと、カバンを投げ捨て、ヘナヘナと座り込んだ。