きみへの想いを、エールにのせて

それはもしかしたら、個人競技である競泳の、隠された楽しさを知るということなのかもしれない。


全力で泳ぎ切った後も、次の選手に"勝ちたい"という気持ちを託し、ひたすら祈り続ける。
そして仲間がいるからこそ出る力は、計り知れないとも言う。

メンバーで喜びを分かち合う瞬間を知っている選手は、強くなる。


「はぁー。わかったよ」


きっと卓君だって知っているはず。
彼の過去のデータを調べたら、所属していたチームでリレーの経験もあった。


「それじゃあ、お疲れ様」


脇田君も小栗君もリレーは初めてだと不安顔。
でも、結城君の「大丈夫」のひと言で、納得した。

これで、部活は解散できなくなった。


「茜、帰るぞ」


いつものように卓君は私を誘う。
< 249 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop