きみへの想いを、エールにのせて

「教えてやろうか?」

「……うん」


もともと医学部を目指している彼は、結城君と同じように成績上位。

さほど勉強していない様に見えるけど、もしかしたら陰で努力しているのかも。


泉に聞くために数学の宿題を持っていた私は、そのまま彼の家に向かった。

父親が開業医だという彼の家は、閑静な住宅街の中でもひときわ大きい。


「お邪魔します」

「あぁ、誰もいないから」

「そうなの?」


てっきりお母さんがいると思って緊張していたのに、気が抜けた。


「お母さん、お仕事?」

「いや。離婚してる」

「あっ、ごめん……」


触れてはいけないことだったかもしれないと慌てたけれど、「気にするな」と言ってくれた。


彼の部屋は2階の南向き。
太陽の光が差し込むその部屋は、私の部屋の広さの2倍はあった。
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