きみへの想いを、エールにのせて
「悪かった。一生懸命でも、結果がついてこないこともあるもんな」
突然声のトーンを下げた彼に驚きながら、うなずいた。
「さすがだね。医学部目指しているだけのことはあるよ」
彼の説明は先生よりずっとわかりやすかった。
今まで解けなかったのが不思議なくらい、スラスラと解けていく。
「医学部に行きたいわけじゃない」
「そうなの?」
お父さんの跡を継ぐのだとばかり……。
「他に、したいことがあるの?」
「水泳」
あっ……。
もしかして無理矢理辞めさせられたの?
「なんて、冗談」
と彼は言うけれど、冗談には聞こえない。
「俺の意志なんて、関係ないから」
グラスについた水滴がツーッと伝って下りていく。
父親が医者でこんなに大きな家があって、うらやましいと思ったけれど、もしかして彼は辛いのかもしれない。