きみへの想いを、エールにのせて

「悪かった。一生懸命でも、結果がついてこないこともあるもんな」


突然声のトーンを下げた彼に驚きながら、うなずいた。


「さすがだね。医学部目指しているだけのことはあるよ」


彼の説明は先生よりずっとわかりやすかった。
今まで解けなかったのが不思議なくらい、スラスラと解けていく。


「医学部に行きたいわけじゃない」

「そうなの?」


お父さんの跡を継ぐのだとばかり……。


「他に、したいことがあるの?」

「水泳」


あっ……。
もしかして無理矢理辞めさせられたの?


「なんて、冗談」


と彼は言うけれど、冗談には聞こえない。


「俺の意志なんて、関係ないから」


グラスについた水滴がツーッと伝って下りていく。

父親が医者でこんなに大きな家があって、うらやましいと思ったけれど、もしかして彼は辛いのかもしれない。
< 255 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop