きみへの想いを、エールにのせて

「皆……」


彼は気持ちを落ち着けるかのように、麦茶をゴクッと喉に送る。


「皆、俺が期待に応えられないと、手のひら返して離れていく。成績が思うようにあがらないと『バカな息子ね』と愛人のところに走ったお袋も、水泳で表彰台を逃したらいなくなった真夜も……」


真夜さん?
もしかして真夜さんと付き合ってた?

彼は苦しそうに唇を噛みしめ、テーブルの上の手をギュッと握った。


「きっと、茜もだ。いつか俺を捨てるんだ」


この時、初めて彼の苦しい胸の内を見てしまった。
でも……。


「捨てたりなんて……キャッ」


突然彼は私の手首をつかみ、床に押し倒した。


「捨てる、くせに」

「違う」


成績の良し悪しや、バタフライのタイムで彼を拒否したりなんてしない。
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