きみへの想いを、エールにのせて
「嘘、つけ……」
彼の声が小さくなった。
「嘘じゃない。あんな風に始まったから、卓君のことが憎くてたまらなかった。でも時々見せる優しさに驚いてもいた。それに、ひたむきに練習している姿を見て、悪い人じゃないのかもしれないとも思った」
結城君の組んだメニューよりきつくして、必死に追いつこうとしている姿は、かっこよかった。
心を開いて?
今までの経験は辛いことばかりだったかもしれない。
でも、あなたのことを理解してくれる人は必ずいる。
彼は私の上からどいてくれた。
そして、ゆっくり起き上がると……。
「茜」
強く私を抱きしめた。
「怖がらせてごめん」
「ううん。いいの」
彼の手が小刻みに震えている。
やっぱり悪い人じゃない。