きみへの想いを、エールにのせて

「そばにいてくれよ、茜」


ずっと寂しかったのかもしれない。

母親に置いていかれて、恋人に去られ……。
もしかしたらお父さんも忙しくて、こんな大きな家にひとりで取り残されて……。


彼が私に求めている物は、恋人としての”好き”ではない気がする。

それでも今この手を離したら、自暴自棄になるのは目に見えていた。


「うん」


本当は、彼も私の気持ちが自分にないことに気がついているはず。

それでも、誰かにすがりたい気持ちはわからないではない。


もう少し、卓君のことを知りたい。
そして冷たくなってしまった心を温めてあげたい。


果たして私にそんなことができるのかわからなかったけれど、目の前で震えている彼を放っておけなかった。
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