きみへの想いを、エールにのせて
1400メートルも泳いだというのに、結城君はキックを激しく打ち始めた。
ラストスパートだ。
100メートルくらいなら、キックを打っても持つはずだと結城君は言っていた。
でも……心配でたまらない。
だけど……。
「やるな、アイツ」
無事にゴールした瞬間、我慢していた涙が溢れてきてしまって、電光掲示板に表示されたタイムが見えない。
それを見かねた卓君が、私の代わりに持っていたノートに書きこんでくれた。
そして……。
「よかったな、茜」
ノートに書きこまれた結城君のタイムは、上位大会の標準記録を切っていた。
つまり、もっと上位の大会への切符を手にしたのだ。
そして、彼は首からかけていたタオルを、私の頭から掛けてくれた。
まるで涙が止まらなくなってしまった私を隠すかのように。