きみへの想いを、エールにのせて

卓君の前でこんなに泣くなんて……と思ったけれど、この日を待ちわびていた私は、感情が高ぶりすぎて自分ではどうにもなりそうになかった。

とうとう結城君が、競泳の世界に戻ってきた。


「ありがと」


なんとか泣き止みタオルを返すと、「まだ終わってないぞ」と卓君が私を笑った。

だけど、その笑顔が一瞬悲しげに見えたのは、気のせいだろうか。


着替え終わった結城君が私たちのところに戻ってきた。


「おかえり」


小栗君が声をかけると……。


「ただいま」


なんだか家族みたいでうれしい。

結城君と他の3人の間には、ずっと温度差があった。
それはレベルの違いもあったかもしれないけれど、競泳への情熱が圧倒的に違った。

でも、練習を重ねていくうちに、少しずつその差は埋まり、最近では打ち解けてきていた。


そしてようやく今日、南高校水泳部がひとつにまとまった気さえする。
< 275 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop