きみへの想いを、エールにのせて
卓君の前でこんなに泣くなんて……と思ったけれど、この日を待ちわびていた私は、感情が高ぶりすぎて自分ではどうにもなりそうになかった。
とうとう結城君が、競泳の世界に戻ってきた。
「ありがと」
なんとか泣き止みタオルを返すと、「まだ終わってないぞ」と卓君が私を笑った。
だけど、その笑顔が一瞬悲しげに見えたのは、気のせいだろうか。
着替え終わった結城君が私たちのところに戻ってきた。
「おかえり」
小栗君が声をかけると……。
「ただいま」
なんだか家族みたいでうれしい。
結城君と他の3人の間には、ずっと温度差があった。
それはレベルの違いもあったかもしれないけれど、競泳への情熱が圧倒的に違った。
でも、練習を重ねていくうちに、少しずつその差は埋まり、最近では打ち解けてきていた。
そしてようやく今日、南高校水泳部がひとつにまとまった気さえする。