きみへの想いを、エールにのせて

コンマ何秒を争う世界で、10秒は大きい。


「全員がベストを尽くそう」


卓君はまだ素直に頷いたりはしない。
でも、きっと気持ちは同じ。

そして……。


「行ってくる」

「うん」


リレーのアップのために立ち上がった卓君は、私の頭をクシャッと撫でて去っていった。

ひとり残された私は、ソワソワして落ち着かない。
いくつもレースが行われているのに、ちっとも集中できない。


それから20分ほどすると、いよいよフリーリレーが始まった。

南高校はエントリータイム順で、2組目の一番端。
真ん中から速い順で並んでいるから、その組では、エントリータイムが一番下。

それでも、なにがあるかわからないのがこの種目。


今まで何度も逆転劇を見てきたし、とんでもないベストタイムをたたき出す選手もいた。
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