きみへの想いを、エールにのせて
今となっては、卓君たちを結城君のために誘ったことがどれだけ失礼だったのか、よくわかる。
それでも、皆がやってよかったと思ってくれているなら、こんなにうれしいことはない。
その日も卓君は私を家まで送ってくれた。
「わざわざありがとう。ゆっくり休んでね」
家の前に着くと、彼に笑ってみせた。
すると……。
「茜」
彼は私の腕を強く引き、腕の中に閉じ込める。
「俺……本気でお前のことが好きになった」
「えっ……」
彼の髪からする塩素の匂いはスイマーの証。
「結城のところにいかないでくれ」
背中に回った手に力がこもる。
「茜……俺のそばにいてくれ」
切なげな彼の声に胸がドクンと音を立てる。
私はなにも言えなかった。
トゲトゲしく意地悪な卓君が、本当は優しくて、強がっているだけでもろい人だと知った。