きみへの想いを、エールにのせて
でも、結城君のことを忘れた訳ではない。
いや、中学の時より長い時間行動を共にしていて、その真面目な性格や優しいところにますます魅かれている。
だけどどうしても卓君に「ごめんなさい」と言えない。
それは水泳部存続のためだけでなく、卓君がどうしても放っておけない。
「疲れたでしょ。今日はありがとう」
彼への答えを口にすることなく離れると、一瞬眉間にシワを寄せたけれど、「それじゃ」と離れてくれた。
家に駆け込み自分の部屋のカーテンの隙間から外を覗くと、卓君がじっと見つめていた。
どうしたらいいの?
結城君への気持ちは変わらない。
でも、自分の価値を見失っている卓君も心配で離れられない。
複雑な関係に、溜息をつくことしかできなかった。