きみへの想いを、エールにのせて

でも、結城君のことを忘れた訳ではない。
いや、中学の時より長い時間行動を共にしていて、その真面目な性格や優しいところにますます魅かれている。

だけどどうしても卓君に「ごめんなさい」と言えない。

それは水泳部存続のためだけでなく、卓君がどうしても放っておけない。


「疲れたでしょ。今日はありがとう」


彼への答えを口にすることなく離れると、一瞬眉間にシワを寄せたけれど、「それじゃ」と離れてくれた。


家に駆け込み自分の部屋のカーテンの隙間から外を覗くと、卓君がじっと見つめていた。


どうしたらいいの?


結城君への気持ちは変わらない。

でも、自分の価値を見失っている卓君も心配で離れられない。


複雑な関係に、溜息をつくことしかできなかった。
< 287 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop