きみへの想いを、エールにのせて
その日は、次に出る試合を奥寺先生と共に決めた。
「結城、お前はA級の試合にどんどん出て、記録を縮めろ。この調子なら、来年のインターハイを狙えるかもしれないぞ」
「はい」
学校の部活として出る試合は少ないけれど、彼は記録を残すために、スイミングクラブから数回試合に出場している。
そのたびに記録を大幅に塗り替え、あっという間に県内では上位に近づいてきた。
一方、卓君もタイムを伸ばし、結城君と同じA級の試合に出られる資格は得たものの、まだまだ表彰台は遠い。
100メートルバタフライの方が競技人口が多いこともあるけれど。
「香川は……」
奥寺先生が口を開くと、卓君は顔をしかめる。
「わかってますよ。リレー要員ですから俺は」
「違うよ、卓君!」
結城君が頭ひとつ抜けたことで、焦っているのはわかる。
でも、着実に力をつけているのだから、このまま踏ん張ってほしい。