きみへの想いを、エールにのせて
「お前は十分速いのに、結城のようなストイックさが足りない」
それも違う。
卓君は決して手を抜いたりしていない。
「先生、違います。彼は……」
「茜、もういい」
きっと彼はこんな悔しい思いを何度もしてきたのだろう。
だから、他人に心を開こうとしない。
「リレーの順だが……」
「香川がアンカーで」
すぐに口を開いたのは結城君。
「でも、結城の方が駆け引きできるんじゃないか?」
試合慣れしているのは圧倒的に結城君。
でも……。
「前回のラップは香川の方が速かったですから、そうしてください」
もちろん何番目に泳いでも、その役割は重要だ。
だけど、着順が確定するアンカーは、精神的な重圧も背負う。
そういう意味で先生は、結城君を指名したのだろうけど……。